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とわずがたり

(この創作はフィクションです。実在の人物、団体などとは全く関係ありません。)

 陛下が王妃様をなくされたのは、私がこの王宮に上がる少し前だと、聞かされました。
 貴婦人の中の貴婦人とたたえられ、したうものも多かったとのお話し、何より、夫として王妃様を慈しんで来られた陛下のご心痛はいかばかりか、宮廷の子女へさまざまにお手をつけられ、しかしだれと定まったお相手のないことを、陪臣は揃って内心憂えていたようです。
 私はそういう中、まだ幼くしてお母上に先立たれた王子様のお遊び相手として、見いだされ宮廷にあがりました。王妃様の忘れ形見として同じように慈しまれて居られます王子様は、じつに私になついて下さり、その雰囲気にも大分なれた頃、その出来事は会ったのです。

 ある日のサロンで
「年は、いくつになったね?」
そうお尋ねになりますので、私が年を答えると、
「子供でもなく、さりとて無用に大人びてもなく」
陛下はそう得心をされたお顔をして、場所柄いろいろと目も多かったからと思います、私にごく近い場所においでなり、耳打ちされるように尋ねられました。
「大人になったかね?」
最初、そのご質問には答えられませんでした。年を聞かれたのにことさらに大人という、それが何を指しているか、私には十分にわかったのですが、サロンのような場所で口にするには、あまりにはばかられることだったからです。顔から火が出るようで、まともにお顔など見られるはずもありません。
「返事は?」
促されて、それでも私は、うなずくことでしか返事をすることが出来ませんでした。でも陛下はじつにご満足そうでした。
「可愛らしく照れるものだ」
そうおっしゃられて、側の使用人に、何事かおっしゃられたようでした。使用人の方は私にいぶかしそうな一瞥を投げ掛けますが、陛下のご命令を承ったようでした。私はもう、その場所から離れたく、王子様がせかすままに、お相手をして差し上げようと、サロンから離れていきました。

 夜になり、王子様がお休みになってから、陛下が私をお呼びになりました。
「王子は眠ったのかね」
私のいでたちをごらんになり、そうおっしゃいます。今のままでいいというお言葉があったために、私も格好も後は寝るだけという風情だったのです。
「話しには、お前の添い寝がないとだめだそうだが…王子もそろそろ十歳、然るべく許嫁を決める年になる。いつまでもお前にべったりでは、お前にも嫁のもらい手がないだろうに」
「そんな…私は、ここで王子様のお世話が出来て幸せと思っております。結婚などは親の決める話、私にはどうにも…」
「はは、そんなことなど考えも及ばないか。
 いいだろう、来なさい」
「…はい」
陛下の寝台のそばにまで来た時、陛下が私の手を取られ、するりと引き込んでしまわれました。組み敷かれるようになり、私は、硬い表情のまま、陛下を見上げていたのかも知れません。
「縁談の一つもないというなら、その体もきれいなものだろうな」
「あ」
「何、これでも私は心得はしているほうだ。処女に一から仕込むのも、回りくどいが悪くない」
そのときになってやっと、私は陛下のお伽に選ばれたのだと、合点が行きました。どうして私がと、戸惑いながら、私の体は棒のように緊張します。陛下は私のそんな様子を見て取られたのか、
「かたくなる必要はない…私の言うとおりに、動けばよいのだ」
と、やさしく微笑んでくださいました。私はそれに、やっと返事をするのが精一杯だったのが、今にして思えばなんと子供しいことでした。

 陛下が、私の衣装に手をかけられました。脱ぐ必要があるのだとわかった私は、自分でしようとしたのですが、陛下は私の手をとられ、
「遠慮はせぬがいい、これも閨の作法のうちだ」
とおっしゃられます。現れてゆく肌に、陛下のお目が注がれるのがわかって、私はどうしていればいいのかわかりません、
「きれいな肌をしている」
そうお褒めをいただき、恥ずかしいながらもうれしく思ったものでした。
 お手が私の顎に添えられて、気がつけば、私は陛下と唇を合わせていました。陛下は私の唇を舌で撫で、あるいはご自身の唇でゆっくりと味わわれます。もちろん、初めてのことでした。話に聞いていた接吻より、激しくて濃いものでした。それだけで、私は顔を赤くしていたようです、
「上気した顔もなかなかよい」
唇をよそに動かれるとき、耳元でそう聞こえました。
「は、はしたないところを…」
そう恐縮する私の身を起こされて、陛下の唇が私の首筋をたどってゆかれます。私の背に、ぞくりと、震えのようなものが走りました。
「あ」
陛下は、その私の反応を期待されておられたのかも知れません、
「どうした?」
とお尋ねになられますが、少しも、戸惑っておられるようなそぶりはありませんでした。私は、その震えの意味がわからなく、
「いえ、特には…」
と、いい濁すよりなかったのです。

 私の上半身は、もう何も着ていませんでした。陛下のお目が、私の胸に注がれているのがわかり、私はにわかに恥ずかしくなり、庇いながら身を背けてしまいました。これまでに陛下のお相手をされたというだれかれという貴婦人を思い出されるにつけ、自分の体の未熟さが恥ずかしかったのです。それを陛下は優しくご自身のほうに抱き寄せてくださいました。
「隠す必要はない」
「で、でも…」
「私にはもったいなくて見せぬことができるか」
「滅相も…ありません、その…」
縮みこむような思いの私の、隠されていない胸元に、陛下が顔を近づけられました。
「直に慣れる。私だけに見せるがよい」
手を押さえられ、私の胸があらわになりました。部屋が私には寒かったことと、緊張で、私の胸の先が固くなっていることはわかっていました。陛下のお手が、かぶさるようにまわされ、うごめき始めて、私の体は震え始めたのです。
「あ、な、…何…?」
「中々の手触りだ…乳首も愛らしい」
陛下は私の胸の感触を堪能しておられるようでした、指の腹でやさしくおさえられ、手のひらが乳首をこするのでしょう、はじめて味わう感覚に、私は言葉を失ってしまうのでした。
「ああ、陛下…そんな…」
「ここには私とお前しかいない。ここでは好きに私に甘えてもよいのだぞ」
もったいないお言葉でした。もったいなさと、頭の中が真っ白になるような感覚に、私が返答をしかねている間も、陛下は私の胸で楽しんでおられるようでした。
「あの…」
この場にふさわしい言葉をどうにかして出そうと、私は思っていたのです。
「いかが、でしょうか…」
「何がだ」
聞き返されて、私はまた、言葉に詰まりました。
「その…私…」
「何がだと聞いている」
「その…あまりにご熱心なので…」
陛下が短く笑われました。
「ははは、熱心といわれても困る。よしよし、では責め方をかえよう」
そして、指が私のかたくなった乳首をひねったのです。強い刺激でした。私は陛下の前であることを忘れたような声をあげてしまいました。
「あっ」
陛下のお部屋です、近くに誰が控えているかもわかりません、私は唇を閉じました。ですが、声をこらえようとすると、体全体が熱くなり、頭が朦朧としてしまいます。そして、われを忘れて声をあげてしまうのです。

 私はいつの間にかまた横にされ、全身で陛下のお体の重みを感じていました。陛下は、私の胸に唇をまわされておられるようです。胸の先が熱く、体がふるえてしまいます。体がはねる様子に、陛下が
「感じているようだな」
とおっしゃられました。きっと、この朦朧とした感覚が「感じる」ことなのだろうと、私は察しました。
「…はい…」
はじめてですが、決していやなものではありませんでした。むしろ、慕わしく、飲み込まれるのが怖いほどでした。
「怖いか?」
それを見透かされたようなご質問にも、私はうなずいて答えました。
「まだ多少は戸惑うこともあろう、しかし、この先を求めるには必要なことだ。そして、この先があればこそ。私もお前も、王子も生まれてきた」
そうお言葉のある間も、お手は必ず乳首を楽しそうに触れておられます。私は
「は、はい…ああっ」
ぴくりぴくりと、はしたなく体を震わせながらおりました。

 体の奥の熱さがこごって、ぼんやりとします。言葉にするには恥ずかしいあの場所が、妙に存在を主張しているように感じていました。陛下が、それに気がつかれました。
「おお、これは気がつかなんだ」
と、私の衣装のすそに手をかけられました。
「お前の声があまりにかわいらしいので、意地悪をしたよ」
とおっしゃられながら、衣装が全部からだからはなれていきます。私は、反射的に、手であの場所を押さえてしまいました。
「さあ、いまさらそんなおいたをしても無駄だぞ」
陛下の手のお力には、結局逆らえませんでした。ひざが押さえられ、大きく広げられたようでした。だんだんと増え、私の悩みのタネになっている下の毛まで余すことろなく、陛下の前に差し出してしまっているようで、私はそれまでの余韻もどこへ、また消え入りたい思いでいたのです。
「なかなかまぶしい…未開の大地よ」
「いけません…そんな、ご覧になられては…」
「なんの、きれいなものだ」
陛下のお手が、太ももの内側に触れました。また、あの感覚が戻ってきます。
「ああ…」
指、なのでしょうか、あの場所に存在感を感じました。鳥肌が立つようでした。
「おお、すっかり開いている…これが手いらずとは」
「んああっ」
下の、茂ったところに、お手が当てられました。そのまま、また、胸をお楽しみになるようです。
「ああ、そのようにされたら…困ってしまいます…」
「まだまだ…これはどうだ?」
あの場所の指が、ゆっくりと動き始めました。
「くぁぁん」
電撃が走るようでした。融けそうでした。目の前が真っ白になってしまいます。
「…私の愛撫でこんなにも濡れたか…」
陛下の落ち着いたお声がしました。陛下の重みが、私の上から消えました。そして、私の太ももの間に、陛下の息を感じました。

 ぴちゃ。そういう音がいました。
「んんぁ…」
もう、はしたなく上がる声を自制する理性は半ば薄れていました。
「指では痛かろう。今日は最初だ、様子見にしようではないか」
そういうお声が、私の足の方でしました。
「美味だ…」
指でないものが触れる感覚がします。私のあの場所はどうなってしまっているのかと、考えるのが精一杯でした。
「おお、ひだがうごめいている…今後が私も楽しみだ」
私のあの場所は、陛下のおめがねにかなったようでした。一箇所、取り分けて敏感な場所があるのを、陛下は丹念に指と唇でいつくしんで下さっているようでした。
「おお、後からあふれてくる…」
その場所が痙攣を始めました。息が苦しくなってきます。
「ああ、あっ… あああっ だめです、だめです、そんな…」
「ためらうな、楽しめ」
「ひああっ」
叫びそうになり、私は奥歯をかみました。迫ってくるものにされるままに、腰が浮き上がりました。
「うくぅぅぅぅ…!」
びくん。 脈打つような音をはっきりと聞きました。ぺったりと、そこが陛下のご寝台であることもかまわずに、私は手足を投げ出し、呼吸が整うのを呆然と待っていました。陛下は、大変ご満足そうな顔で、私の髪を撫ででくださいました。
「どうだった?」
「あ…」
なんといっていいのか、私は顔を熱くすることしかできませんでした。
「ははは、おまえにはこれから教えがいがある」
陛下はそうお笑いになりました。
「今夜は、このまま私のそばで眠りなさい」
そして、ご自身が横になり、私を招かれます。私は服を探したのですが、陛下が私を引き寄せられました。
「裸でよい」
「は…はい」
横様ながら、わたしは陛下に抱きすくめられました。
「おまえにはおまえの良さがある。誰に中傷されても、私が守ろう」
「あ、ありがとう、ございます」
「しばらくは、お前に閨の作法を教えることに専念しよう、ほかの女は近づけまい」
「…」
陛下には、あれこれとお考えになることがおありだったのでしょう。でも、そのときの私には何も考えられませんでした。初めての激しいひと時のあとの心地よい疲れが、私を眠りに落としていきました。


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