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「教えてあげられることはまだまだありますものね」 もろ肌を脱がされたフィンと、すでに一糸もまとっていないナンナの前で、ラケシスはしたり顔で言った。 「教えて…って、お母様、どういうことですか」 「この人の初めては私がいただいちゃったのよ」 嬉々というラケシスの前には何の隠し事は無駄と観念したらしく、フィンは 「はい、おっしゃるとおりです」 とうなだれた。 その持ち主の気分に呼応しているのか、もっとも、この特殊な環境で張り切れという話はまず無理と言うものだろうか、出てきたフィンはなんとなく元気がない。 「ナンナ、いらっしゃい」 フィンの脇にはりついていたナンナが、少しく目じりを染めながらにじり寄る。 「男の人のを見るのは初めて?」 「は、はい」 「そうね、これは大体二割ってぐらいかしら」 そういって、ラケシスは、おもむろにフィンに舌をはわせた。 「わ」 「よく見せてお勉強してもらわないとねぇ」 ラケシスが楽しそうに言う。急遽結集した血液が、半ば萎えていたものを、いやがうえにも勢いづかせる。ナンナが目じりを染めて、不思議なものを見るかのように 「…まぁ」 声を上げた。 「いいことナンナ、基本的に男の人の弱い部分は、カリっていう先の部分と」 「はい」 「この裏側の、皮がつながっているところ。ウラスジっていうの」 「はい」 授業自体はいたってまともに聞こえる。まじめに、しかし興奮に頬を染めながら、自分の持ち物をためつすがめつする母娘は、いずれ菖蒲か杜若だ。フィンはその二人のどちらとも、視線を合わせようとしない。 「やってみる?」 と問われ、 「がんばってみます」 と答えた娘は、自分とは挨拶より濃い接吻もまださせたこともない、小さな赤い唇を開き、亀頭の真下あたりをあまがみした。そうしながら、フィンの反応をうかがうような視線を、ちらちらと投げてくる。 「大丈夫よ、ちゃんと反応してるから」 それをラケシスが微笑みながら眺めている。異様な光景だ。のみならず、 「お留守になってるところは私がしようかしら」 と、ラケシスまでもが唇を合わせてきた。復習するようにナンナは亀頭を責め、ラケシスは嬉々として応用技をつかってくる。このままでは、袋まで吸い込まれかねない。 フィンの腰がやや浮いてきたのを見て、ラケシスがナンナに耳打ちした。しかし、この近さでは、内容などまるで聞こえてくる。 「先に、穴みたいなものがあるでしょう、そこに…」 「は、はい」 ナンナはまたも、フィンの顔色を伺いながら、亀頭を唇の中に収め、その先端に舌を差し入れてきた。 「うぐっ」 我ながら、情けない声だ。しかし、ラケシスは肩を震わせ笑っている。 「そこも、よくきくところよ」 二人がかりで責められてはたまらない、 「も、もういけません、これ以上は」 奥歯をかんだ奥から絞るようなフィンの言葉に、 「いいのよ、そのまま出しちゃいなさい」 ラケシスはなんでもないように答え、うらすじを舌で撫でた。 「うぁっ」 直後、ほとばしった白い液体が、母娘の顔と髪にかかる。 「きゃっ」 ナンナは、その雫を指で拭い取った。 「乾いたらぱりぱりになっちゃうわよ」 首を傾げて、母に何か問いたそうにすると、ラケシスは傍の水差しで布を湿しながら 「何だと思う?」 と逆にたずねた。顔を拭かれながら、今度は聞こえないように耳打ちされて、 「え」 ナンナはぱっと顔を赤くした。 「嘘じゃないわよ、あれが、あなたのかわいいところのなかで出てもらわないと、赤ちゃんなんて来ないのよ」 母は平然と生命の神秘を説明し、二人がかりで責められた罪悪感と脱力感で、がっくりうなだれたフィンを、同じように拭き清めた。 こんなデカダンスな関係、あっていいはずがないと否定する一方で、素直に反応してしまった自分が恨めしい。 投げ出された彼の片足にまたがるように座り、ラケシスがゆっくりと、もたれ掛かってくる。 「あなたは、そんな事知らないというでしょうけれども」 と、自分の指をくわえて復習するナンナを見た。 「女性について通を自称する人は、『本当の理想の女性は、出会うものではなく、創るものだ』というわ。 そして、それを実行する人は、投資と言って、小さい女の子を買うそうよ」 「…」 「そういうことよ、兄か、誰かのために創られた私じゃなくて、あなたがナンナを選んだのは、あなたは自覚していないでしょうけど、あなたが自分のためにナンナを創り上げたからなのよ」 「まさか」 ぽってりと熟れたその唇を、一見慣れた風にフィンが吸うと、 「嘘じゃないわよ。私とナンナは、似ているようで、ぜんぜん違うわ」 ラケシスは彼を握り、その手を自分に誘導した。 「ん」 そして、自分の手で、彼の指を花びらの中に沈ませて、悩ましく身をくねらせた。 「…いけません、ナンナが」 フィンが耳打ちをする。しかしラケシスは、「アレをみなさい」と言うように、視線を動かした。ナンナは、二人に背を向けて、張り詰めた糸が突然はじけたように、眠り込んでいた。フィンは片手で、寄せられていた布団をかける。 「優しいのね、妬けるわ」 と、茶化すでもなくラケシスが言うと、フィンの指が、ラケシスの奥にぐっと割り入ってきた。 「あぅ」 何か言い換えすスキもあらばこそ、唇で唇をふさがれ、奥庭を指で探られるうちに、ラケシスは、うっとりと瞳を閉じ、のどの奥で、喘いだ。 ぽこん。 「ふぁ」 目を覚ますと、ナンナは寝台の外に転がり出ていた。いつの間にかかっていたのか、羽根布団が自分の体を、落下の衝撃から守ってくれたようで、怪我はどこにもなさそうだ。服は相変わらず着ていないが。 「やだ、私、眠っちゃったんだわ」 そうつぶやいて、ナンナは寄りかかってていた寝台の縁から後ろを振り返った。振り返って、その光景に胸がつぶれるほど驚いた。 「やだ、なに…あれ……」 つぶやいて、ナンナは、羽根布団を頭からかぶった。そっと向き直り、その布団の隙間から、目の前の有様を観た。 ラケシスは真横を向いて寝かされ、片足を高く上げていた。自分では、指でしか触れたことのないその場所は、足にあわせて大きく開け広げられて、その真ん中に、フィンが、あの勢いついたものを貫かんばかりに突き立てていた。いたずらそうな顔で自分に何くれと教えていた母も、今はされるままになっているようで、腰が深く沈むのにあわせて 「あ、だめ、そこ…」 なまめかしく、小声で喘ぐ。 「そう、かき回して…」 手を伸ばせば届くようなところで、母はなまめかしく体をくねらしている。そのうち、体勢が崩れて、二人ともうつぶせる格好になる。それでも、彼女の片足はまげられて、律動のゆさぶりは終わらない。 「お母様…きれい」 それを見て興奮したからだろうか、それとも布団蒸しになっているからだろうか、ナンナは額から汗が滴るのもかまわずに、その光景を見ていた。 が、その母と、目が合った気がした。そして案の定、 「お目覚めね、眠り姫さん」 と言われた。 「まあ、こんなに汗かいて」 掛け布団から出てきたナンナは、全身蒸された状態で寝台に上げられる。そのまま、ぽい、と投げられるようにフィンに預けられ、何にかの用でもあるのか、部屋を出て行ってしまう。 「軽蔑するかな?」 と、探るようにフィンが尋ねたが、ナンナはかぶりを振ってそれを否定する。 「だってお母様、綺麗ですもの」 「お前も同じほど綺麗だと、何故気がつかないのだろう」 フィンはうなだれるナンナを自分の胸の上に乗せ上げる。 「あの方を探しながら、三年、お前のことを思い出さない日はなかった。 こうしてここに来て、私は後悔することばかりだよ」 汗が冷え始めて、寒そうに身をちぢこめるナンナに布団をかけ、顔だけを向かせる。 「いい声だった」 ナンナは、はとさっきのことを思い出し、顔を背けたくなっても、両手で頬を押さえられていては、それもできない。 「寂しかったかな?」 「…」 ナンナの目に、じわりと涙がたまってくる。 「寂しかったです。私のことを振り向かれることもされないで、お母様を探しに行かれてしまって… 三年も待ちました。生まれてから、何日も離れたことがなかったのに、いきなり三年も…」 いやいやと駄々をこねるように頭を振るナンナを、黙ってフィンは受け止める。 「しかしもうそんな思いはさせない、そのつもりで来た」 「…はい」 「いい子だ」 つい出た言葉が、ナンナの唇でさえぎられる。 「…子どもじゃありません」 「そうだったな」 がば、とフィンが起き上がる。まだ腕の中のナンナに、遠慮会釈もなく、男の唇を絡めた。 「んふぁ」 その唇を振り払うように、ナンナが声を上げる。抱きしめる手が下にする、とおりる。腰の下にある、二つのまろみを撫で、彼女から言えば「後ろ」の方から、指が伸ばされてきた。 「あ」 その場所全体を覆うような手のひらの暖かい感触。そして指は意外に優しく、そのつぼみを捉える。思ったよりまだ潤いが残っていた。いやもしかしたら、見てしまったあの行為の興奮が、引きずっているのかもしれなかった。母の体に突き刺さって、悩ましていたそのものが、手を伸ばせば、触れる位置にある。 しかしその思惑は悟られていたのか、つぼみがぎゅっと体にねじ込まれるようにされて 「きゅぅっ」 ナンナの体は、また縮こまって緊張する。 「何もしなくていい」 「ふあ、は…」 「ただ、私を見ていればいい」 そのまなざしは優しく、そしていとおしげだ。しかし、かけられた布団の下で、徐々にナンナをあおっていく。ほころんだ花びらの中に指が入っていくのがわかる。つうん、と、鈍い痛みがする。 「痛いか?」 と問うても、ナンナはかぶりを振ってこらえようとする。フィンの胸の上で、ナンナの手はきゅっと握られ、頬と目じりを真っ赤に染めて、指とはいえ、初めて入ってくる「男」を迎えようとするいじましさ。 やおらフィンは起き上がり、上に乗せていたナンナを今度は腕の下に組み敷く。 「私を、受け入れてくれるね?」 彼女にしか聞こえない、低い声でささやく。ナンナは、言われたとおり、フィンを見あげるようにしながら、こくり、とうなずいた。 ラケシスが何かの用を終えて、部屋に戻ってきたのが、ちょうどそのころだった。しかし彼女は、寝台の景色を遠巻きに伺うようにして、邪魔をするようなことはしない。 そこでは今まさに、娘の破瓜が果たされようとしている最中だったからだ。 「だめねぇ、そんなに怖がったら、かえって入らないのよ」 と呟くとおり、ナンナは固く狭まり、添えられた亀頭をはじき返さんばかりである。 「急がないから…力を抜きなさい」 フィンがささやいて、つぼみをいとおしそうに撫でる。 「あっ」 その感覚に誘われて、ふ、と力が抜けるのにあわせて、奥に入ってゆく。そこが全部入れば、後は、ゆっくりと、根元まで入れてしまえばいい。 「…入ったよ、全部」 そんなナンナは、痙攣するような動きをし、痛みを紛らわすように、深く息をついている。 まだ余計な手出しはいらなさそうだ。ラケシスは手の中の入れ物を軽くもてあそびながら、もう少しその様子を見ていることにする。 ナンナの息が整うのを待っていたように、フィンが動き始める。さっき、ラケシスを相手にしていたものとはまったく違う、滑らせるような動きだ。 「ん…」 ナンナが、やっと鼻にかかった声をあげた。 「ん…ぁ…」 しびれるような痛みは残るけれど、泣き騒ぐほどではない。それよりも、自分の中にあるものが、うごめいて、一人遊びでは得られない、新しい感覚を掘り起こしてくる。 「…んはぁ…」 破瓜を終えた直後とは思えない声が上がる。その変貌振りには、フィンも戸惑っているようだ。 「ナンナ?」 と、正気を促そうとするが、相手からの動きがないとわかるや、下腹をすりつけるようにして、うっとりと真上の男を見つめ、それはまるでねだるよう眼差しだ。 「お続けなさい」 その段になって、やっとラケシスは、ナンナに見えないところからそうささやいた。 「最高の初体験よ。初めてなのにこんなにさせちゃうなんて、罪な人」 混ぜ返しを聞くのもそこそこに、ナンナにねだられるままに、腰を使う。そのうち、こつん、とナンナの奥底に先端が当たった。 「あん」 それとナンナの声が、明らかに連動している。出血もなく、あふれ出てくるのは、彼女の歓喜の蜜だけだ。 そのナンナが、 「フィン様ぁ…」 と、その名前を呼んだ。フィンは、とりもなおさず絡むように彼女の顔に近づき、 「何?」 と尋ねる。 「もっと、ください」 「何を?」 「お母様に、されてた、あの、激しいの…」 「いいよ、あげよう」 ぎしっ、と、寝台のバネをきかせる。ナンナの恍惚とした声が高く上がる。その声が甘い。ともすれば、その気迫に負けそうだ。 「後ろからにしてみなさいな」 弾む寝台の片隅で、ラケシスがささやく。そのようにして、もう一度沿わせると、もうその入り口に抵抗はない。 「ふぁぁぁ」 かえって、その深さが、ナンナをうっとりとさせる。乱れているのに、それでいて、浅ましいところはどこにもない。ぺたりと、腰から上を寝台に預けて、その上にかぶさると、 「はいそのまま」 とラケシスが言う。 ずん、と重い挿入感。しかしそれは、ナンナにではない。 「ぁ」 フィンが息を引いた。背後から、がつん、と殴られるような感覚が襲ってくる。 「い、今はおやめください、集中が…」 「だめよ、続けて、あの子、もう少しだから」 ラケシスの言うとおり、ナンナは枕をかき寄せ、抱えるようにして、 「ふぁ、ふぁああ、あ、ああ」 奥深くまで入ってくるいとしい人に、精一杯にこたえている。無意識のしまりとあいまって、腰の使いが、自然と速まる。 「あ、大きくなって…」 ナンナが呟くとおり、背後からの追っての刺激が、ますます彼を暴れさせる。 「大きくて、私の…私の中、いっぱいです、あ、ああ、ああっ」 ナンナは、高く、長く声をあげた。そのとき、フィンも、背後から襲ってくる刺激に負けた。 「ぅくぅっ」 結ばれたままのナンナの中に、焼け付くようにこごったものが注がれる。しかし、奇跡のような破瓜を終えて、元のナンナに戻りつつある体に、その量はおさめきれるものではなく、すぐに、白いしたたりになった。 「お母様」 ラケシスのクローゼットからまとえるものを探して、戻ってきたナンナが 「これ、何ですか?」 と、得体の知れないものをつまんでみせた。 「ああ、それは…」 ラケシスは、そばにあった入れ物の中を見せる。 「羊の腸を綺麗にして、指ぐらいの長さに切ったのを、片方を綴じて、固くならないように、香油につけてあるの」 「何に使うんですか、そんなもの…」 ナンナが怪訝な顔をするのに、ラケシスはそっと耳打ちした。ナンナはそれを真っ赤になってうけて 「本当ですか? …でも、後ろの、方に、なんて…」 という。 「だって今、現に使った後の人がそこに寝ているじゃない。前に試したら意外に本気になっちゃうものだから」 ラケシスが後ろを指差し、ふふ、と笑った。 「私、気がつきませんでした」 「気がつかなかったでしょうね、あなたにはわからないようにやっていたもの」 母娘ははたとお互いの顔を見合って、「ぷ」と噴き出した。 「お母様」 「何?」 「もしよろしかったら、私にいただけますか?」 「これを?」 「はい」 ラケシスは、まじまじと、今熟れたばかりの娘を見て、 「いたずらなところは、どうも私に似たようね」 「はい」 |