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怖くない、怖くない
(表サイトの創作「サブリナの言うとおり」を一読すると、より味わい深いと思います) 「へ〜ぇ」 話を聞くだけ聞いて、その場所を離れるフィンの背中には、「嬉しい」の文字が書いてあっる。 「一度後ろ頭にケリでもくれたろか」 ベオウルフはそう思って、止めた。ソレこそ、馬に蹴られる。 しかし、余分な話をした分、フィンがその部屋に到着したのは、ラケシスが予想していた時間より、少し遅かった。部屋の中は、一見真っ暗だ。 「…王女?」 恐る恐る寝室の方をのぞいてみると、枕元にろうそくの明かりを残して、ラケシスがまた、枕を抱えて座り込んでいる。 「あ、よかった。 …来てくれないかと思った」 「王女がお許しくださったのですから」 「うん、でも…このごろ、私少しこわがってたでしょ?」 「そうでしたね」 ラケシスの背中の寝台の縁に、フィンが腰をかける。 「今夜もお気が進まないようなら、おそばにいるだけでもかまいませんが?」 「…」 背中合わせに、ふるふると、彼女の髪が揺れる音がした。 「あのね」 「はい」 「振り出しに戻ったと、思うようにしたの」 「振り出し、ですか」 「そう。だから私、今は初めてさんと同じなのよ」 うふふ。最後に彼女はそう笑った。 「よほど、驚かれたのですね、イグナシオ号のことは」 ローブをとり、ぱくりと襟のあわせをはずしてフィンが言う。 つい先ごろ、ラケシスの愛馬イグナシオが交配の種牡馬としてシレジアの牧場に連れて行かれたのを見物すると言い出したはいいが、勃起状態の馬に失神して、それからラケシスは、なにかしら、自分たちのしていることにも、不可解なこだわりを持ってしまったのだ。 「でもほら、馬は馬、人間は人間、そう言ったのはあなたでしょ?」 「それは…そうですが」 馬の体格からすれば、アレで適度な大きさである。だから人間も、人間にあった大きさであるはずだ。そのときフィンは、そんな慰めにもならないような言葉をラケシスにかけたことを思い出した。しかし彼女は、自分のものをみたことがないという。 「確か、人間の行うことも、交配と同じだと、仰いましたね」 「…ええ」 「ある意味ではそうかもしれませんが、ある意味では違います」 「違うところなんか、あるの?」 「少なくとも、私に限れば、貴女の持っている血が目的ではない」 「…」 するすると背中から近づいて、そのまま背中合わせになる。 「こんなことで悩む姿も可愛い」 「…」 「こんな可愛い人とここにいるだけで何も言うことはない」 「…また誰かに吹き込まれた」 ラケシスが、枕を抱えて少し丸くした背中でそう言った。 「…本気なのですが」 普段遣いの言葉で言おうと試したら、見事に裏目に出た。フィンは「むぅ…」と胡坐をかく。 「無理して普段使いの言葉使うと、苦しいでしょ」 「…苦しいです、確かに」 「あなたの言いたいことは、わかってる。怖がる必要はないって、説得してくれるの、わかってる」 「…」 「ありがと」 「…痛み入ります」 くい、と身をひねり、枕ごと背中から抱きしめる。 「…貴女でよかった」 この枕の役目は私になりましょう。ラケシスの抱えていた枕を、もとあった場所に戻して、やっとお床入り。 「あの、ね」 ろうそくを消さないのは、真っ暗を怖がる彼女のためだ。その光の中でも、分かるほどに顔をそめて 「不思議だなって、思ったの」 「何か、気になることでも」 「さっき、お風呂でね…少し、触ったの」 「どこにですか」 という問いには、彼女はさらに赤くなって、暗がりの方に顔を隠してしまう。 「私の…」 「…ああ」 「指が一本しかはいらなくて…なんでいままであなたのが入ったのか、不思議なの」 その不思議の解決をフィンに求められても、にわかには返答できなかった。それよりも、あられないかっこうでその「実験」をしているラケシスの姿が容易に想像できてしまう自分が情けない。 つい、と、ついばむように唇を軽く合わせる。あごをあげてもっと、とねだってくるので、それに従う。口の中まで舌を入れあうような深い口付けは、まだ、二人とも慣れていない。 「…解きますよ」 衣装の胸元の辺りにある大きなリボンを手に絡めると、ラケシスはこくん、とうなずいた。 サテンのリボンはすぐにほどけて、するりと、柔らかい二つのふくらみをあらわにする。その片方に手を触れると 「…あったかい」 ラケシスはほんのりと笑んで、それに自分の手を重ねた。唇を合わせながら、ふわりと押すと、ぷう、とその先がふくらんでくる。 「んふ」 その固くなった先を押しつぶすように、小さい円を描くようにこねる。体重のかかってこないように、フィンの胸の辺りを突っぱねるようにして支える手が、きゅ、っと握られ、 「あ、あふ」 か細く声を漏らす。ラケシスは、胸先がつぅん、と痛くなってきていた。 「私も、大きくなっちゃった…」 こねていた手が、その胸先に触れ、柔らかく摘み上げられる。 「あんっ」 ぴく、と体が震える。こよりを作るようにひねられ、片方は唇に包まれ、舌先につつかれる。 「ふあ、あ、…あっ」 胸元まで、ぱっと、彼女の体が上気した。機嫌を伺うようなフィンの表情に、視線をそむけるようにしながら、 「やっぱり…もう初めてさんに戻るの、無理みたい」 と呟いた。 つんと、胸先を固く尖らせただけで、浅く息つくラケシスは、恥ずかしがることもせず、フィンが最後まで服を脱いでしまうのを、潤んだ目で見ている。つと、視線をおろすと、何日かばかりの禁欲が響いているのか、すでに半ば以上固くなっている。たまってむらむらするんなら自分で出しちまったほうが楽だぜと、あの師匠は言うが、なんとなくためらわれて、自分で処理することはほとんどない。 「早く続き…して」 と、小さく声が聞こえるが、その声は届いていなかった。 寝台に戻ると、ラケシスは、投げ出していた足を、すり、とすり合わせている。 「いかがされました」 「変なの…あそこ…変なの」 中途半端に火をつけられて、ラケシスはその後の想像で勝手に自分をあおっていた。 寝台の枕に背中を預けて、じいっと、動くフィンの顔を追っている。 唇をまた、ちゅ、とからめて、衣装のすそを手繰りあげて、その奥に指を忍ばせる。 「んっ」 触れたところが、わずかに湿っていた。 「濡れていらっしゃる」 と耳打つと、 「ウソよ、だって、…胸しか触ってないのに」 「経験がそうさせるのです。ご自分で仰ったでしょう、もう初めてには戻れないと」 戸惑うラケシスの片手を、自分に導かせる。 「!」 「これが、私です」 明かりに近いところにいたので、ほぼその姿は、ラケシスの目に入っていた。 「私の指、こんなに細いのに、なんでこんなに…太いの、入ってたの?」 太いというのは自分の指と比較して、のことである。とにかく、あどけなく顔を上げてたずれる彼女に、 「それは、貴女に受け入れてくださるだけの体と気持ちがあるからです」 「今、入る?」 「まだ、無理かも分かりません。貴女も私も、完全に本気ではないので」 「二人とも本気になったら、入る? 入るわよね、だって、入ってたもの」 ラケシスが、両手でフィンを包むように握る。 「本気にさせるの、教えて」 「は、…はっ、ん」 声を上げているのは、ラケシスのほうだ。両手でフィンの本気を誘いながら、自分も、彼の指で濡れている場所をさすられているのだ。しかし、一番敏感な場所は触ってもらえず、ぷわりとした胸を胸に押し当てるようにして、もじもじとする。 「ねえ、もう、本気?」 浅い息の間で、ラケシスが尋ねる。ラケシスの手のあしらいは、フィンを芯まで固くさせ、先から透明な液体が滴るほどになっている。 「あ」 そのラケシスが、両手の動きを止め、にわかに目じりを真っ赤に染めた。今までほんの入り口をあしらっていた指が、くうっと中に入れられる。 「…っ、あっ」 ラケシスが、上半身を擦り付けてくる。 「指…入ってる」 「はい」 彼女は、あいているフィンの片手をとり、 「私より太い…指」 そのまま指を絡めるように手を重ね、彼女はその、自分よりは太い指をちゅう、と口の中に入れる。衣装の下にまだ隠されている花びらは、ゆっくりした指の抜き差しにふっくらとほころんで、とろりとその指を濡らした。 「まだ、少しお辛そうだと思いましたので」 といいながら、フィンの指は容赦ない。ちゅっ、と音を立てて、その指が抜かれ、 「あんっ」 ラケシスがかわいらしく声を上げる。しかし、すぐ、また指が入る。しかし。 「ふぁぁ…」 彼女は背筋をぞく、と震わせた。 「これ、指?」 「はい」 また、じらすように抜き差し。ちゅ、くちゅ、と音が鳴る。 「ん、ん…はふっ」 ラケシスの脚が震え初めて、やがてぺた、とへたり込む。 「おっと」 フィンは、ラケシスの体にまとわりついていた衣装をするりと取り去り、ほんのりと染まった体を向かい合わせに自分のひざの上に乗せた。そして、また、指をさしいれる。 「変よ… 指なのに…指じゃないみたい…」 フィンは唇を緩めて 「二本です」 と囁いた。 「二本?」 「はい」 「入っちゃって…るの?」 「はい、大変美味しそうに」 抜き差しの度に、ラケシスの腰が震えた。 「あふ、あ、はぁん」 そして、もじ、と動く、上目遣いに見つめてくる目は、あの敏感な場所に触れて欲しいと、しきりに訴えていた。 |