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やっぱり。
「私…リーフ様がいつくしんでくださらないと、眠れない体に…」
なってしまったようだ。リーフの苦労かそれとも時間の流れか、ふっくらとして平服の新調すら考え始めた胸は、触れるだけでその先がほころぶ。乳首のかげりの奥には、また明るい肌の色があって、指先が触れるだけで
「ひぁ」
目の奥に火花が散る。
「ん…んく…ふぅ」
眠りを邪魔してはいけない。ナンナは、奥歯をかむように声を殺した。
 長いすの背に片足を預け、足を開く。
「その服の下、下着要らないよ」
といわれて以来、ナンナは下着を着けなかった。つけていてもリーフの手指に反応して、透き通るほどになってしまうのだし、いっそこのほうがいいと、ナンナはそう納得するようにしていた。
 片足をいすに預けると、自然、衣装はたくし上げたようになり、暗い金色のぽやりとした影が見える。その中に、指を差し入れる。
「んくぅぅぅ」
直接触れていたわけでもないのに、何でこんなになってるの?
 ナンナの分身は、本人が高ぶると、薄い肉付きの茂みの中に、ぽつりとはっきり見えてしまう。大きさこそ違え、男みたいに、だ。
 ぴん。指先が触れて、
「は…ぅ」
我をわすれそうになる。しかし、この刺激からくる快感からは逃れられない。腰が沈み込むように重くなって、ゆっくりと、かんしゃくをなだめるようにさする。
「私の指だけど…おとなしくなって」
声をのどの奥でぐっとこらえて、指を動かす。声を殺すと、かえって体に力が入って、上り詰めるまでの時間も早い。
「ふあ…は…」
指を少し奥まで進めると、そこはうるうると、切ない涙が今にも滴り落ちそうになっていて、その涙の出口はナンナの指など抵抗なく入ってしまいそうだ。
「だめ、そこは…私だけど、私のじゃない…」
切ない一人遊びの涙を、満遍なく塗りこめて、少し手荒いが分身を黙らせようと思い立ったとき
「女の子が一人ですませるのは、かわいいけどちょっと切ないね」
近くでそう声がした。ナンナはにわかに我に返り、
「リーフ様!」
ぱさぱさぱさ、と、身を覆ってしまう。
「もう全部見ちゃったよ」
と言われ、ナンナはまた真っ赤になり、うつむいて言葉もない。
「寝台に戻っておいで」
それをリーフは、する、と抱えあげた。
「さっきのだけじゃ、不公平だものね」

 もうだいぶふけていたが、多少の夜更かしは覚悟のようだった。
 寝台に運ばれている間に、図らずあふれた涙は、リーフが全部唇でぬぐってしまった。服のボタンをあけられ、現れた胸にふかりと顔をうずめる。
「あんまりうれしくて、君の事忘れてた。
 ごめん」
「…」
ナンナは返す言葉がない。つう、とリーフの顔が上がってきて、両胸の先をやわらかくつままれる。
「ふぅっ」
「…声、殺さなくていいんだよ」
とがった乳首を手のひらで押し込むようにあしらわれ
「…ぁ」
ナンナのわだかまりがとけてくる。
 リーフのひざの上に、体を真正面にして座らされる。勢い、ナンナは足を開いてしまった形で、リーフの脈々とした姿を、真上から見下ろすようだ。
ついそれに手を添えて、
「お辛そうですね」
というと、
「本当につらいのは君じゃないの?」
と返される。手は、リーフの肩にかけるように離されて、
「ちょっと遅くなったけど、ご褒美の時間だよ」
そういう耳打ちが聞こえた。

 くちゅ、と、ナンナの体の下で音がした。
「あ」
分身に指の先が当てられて、やわらかくまわすようにされる。
「あっあっ、あっ …あっ」
ナンナははやもリーフの首にすがる。あいている彼の手がさわさわと、胸の感触を味わっている。
 局所的な愛撫で、ナンナはうっとりと、目の焦点も合わない。分身で上り詰める瞬間を敏感に悟られて、そのときになるとリーフの手は離れてしまうからだ。
「意地悪じゃないよ」
ナンナの唇が、声なくそう動いたように見えたのか、リーフは目を細める。そして、指が違う場所に当てられて、ナンナはは、と我に返った。
「そこは…」
「君はさっき言ってたね、『私だけど、私のじゃない』」
そんなことも聞かれていたのかと、ナンナの顔にいっそう赤みが走る。
「入り口だけなら、僕の指が遊べる。ナンナは、ここも嫌いじゃないよね」
それは間違いないから、赤らみながらでも頷く。入り口のふちの辺りはややざらりとして、そのざらりとした場所が、分身の直接的な刺激でない、腰を溶かすような、妙な心持にさせるのだ。
「でも今は違うよ」
つくん。ナンナの体が震える。
「んっ」
「それとも、指もだめ?」
そういわれても、現にもう、指はナンナの中に、付け根まで入ってしまっているようだ。ナンナは首を振る。
「ほんとのこというと、少し前から、指になれてほしくて…こっそり練習してもらってた」
といいながら、指が抜き差しされる。
「あふっ」
ナンナの声が変わる。上り詰めるというより、蕩かされる感覚だ。
「嫌?」
という問いに、ナンナはリーフの首にすがりながらふるふると否定する。
「よかった。嫌われたらどうしようかと思った」
「あ、だって、そこは、…んふ…リーフさまの…」
「ありがとう」
空いている手で、ナンナの顔を少し傾け、深く口付ける。リーフの指の周りの暖かいものが、びくり、と震えた。

 「ちょっと、びっくりするよ」
リーフは言って、ナンナに後ろ手をつかせた。指が本当に入ってしまっているその光景に、ナンナは思わず顔が熱くなる。それにしても、動かしてもいない指が、自分の中ではっきりと存在感を主張している。リーフは楽しそうに、その状態で、赤くふっくらと見えているナンナの分身に触れる。
「はぁん…ぁ…」
「わかったかな? ほかのところをかわいくすると、この指の周りがきゅってきつくなる」
そう言って、やっとリーフは指を抜いた。とろりと熱いものが流れ落ちるのを感じる。
「でもまだ、先の話だよ。僕と本当に結ばれて、僕で君を最高に喜ばせてあげられないと、今のは全然意味がない」
言いながら、リーフは、すとん、とナンナを押し倒した。透明なナンナの潤いを彼女の花びらによく塗りこみながら、
「結ばれる練習、しない?」
と伺う。塗りこまれながら、花びらをほぐすような愛撫をされて、
「れ、れんしゅ…?」
ナンナは舌足らずに返す。
「そう。君が手でしてくれるだろ、少し発展系」
リーフは、少しおびえた風のナンナの額にひとつ口付ける。
「痛くないから、大丈夫だよ」

 リーフは、指でナンナの花びらを開き、その中にうずめるように、自分をおいた。
「脚を少し閉めて」
そのとおりにすると、自分がリーフを挟み込んでいるのがよくわかる。押さえ込むようにその場所に手を当てたリーフは、
「動くよ」
と耳打ちした。ほかならぬリーフ自身で花びらをいっせいにこすられて
「ふぁぁ」
とナンナは声を上げる。音だけは本格的だ。ナンナの花びらとリーフの手で作られた、いわば仮のナンナ自身を往復するたびに、ちゅ、にちゅ、と粘つく音がする。
「んはっ」
ナンナがにわかに声を上げる。リーフの腰のふり幅は大きくなり、一番「奥」に届いたとき、ナンナの分身とリーフの亀頭がぶつかったのだ。リーフは一度動きを止め、
「かわいいナンナにぶつかったね?」
といまさらのように問う。ナンナが、赤らみながらうなずくと、
「それでいいんだ」
リーフは、ナンナのほほについと唇を寄せた。

 リーフの動きは、さほど大胆ではなくなった。しかし、ナンナにとって、花びらをこすられ、分身とリーフとがぶつかり合うのに変わりはない。むしろ、そうなるように、彼は動いていた。
「ナンナ、絡みつくみたいですごくいい」
そういうリーフの額から、汗がぽつりと落ちた。
「一番奥で、こりっとして…」
一息つけたのか、またリーフがうごきはじめる。
「はあっ、はぁ、あ、あは…んあっ」
ナンナの声も、だんだん高くなる。
「ご褒美だから、わがまま言っていいんだよ。希望ある?」
耳元で、そうささやかれて、理性のたがが外れかけたか、ナンナははにかみもせず
「あの…」
と、喘ぎながら、しかしいいよどむ。
「何?」
「自分では…何と…んふっ…呼ぶのか…はうっ…わからなくて…」
「うんうん」
「りーふさま…まえにおっしゃった…あ、ああっ…ち、小さな、私…」
「わかるよ」
「りーふさまで…かわいがって…あっ…ひぁっ」
リーフは、押さえている手の指で、ナンナを確認した。小さなナンナは、これ以上ないほどに膨らんで、指でなら少し強く触ればそれで果てられそうだった。
 リーフは、「突き入れた」状態で、小さく体を揺らす。
「ふぁ、あ、はぅ…ぁぁ」
あがる声音が、上り詰める方向に変わった。亀頭の裏側の複雑な構造が、こりこりとナンナをはじくのを、リーフも感じ取っている。
「あ、ああ、はぁっ…ああっ」
ナンナは、寝台の上で感情をもてあますようにいやいやと首を振り、リーフの首にすがる。
「あ、あっ…ふ、ぅあっ…くぅぅぅ…」
「我慢しないで、声出して」
「りーふさま、…りーふさまぁ…」
ほかにも、もっと言いたかったかもしれない。しかし、絶頂の声がすべてを代弁した。

からだを離すと、寝台には、ナンナの滴りがすべて落ちて、ひたひたとしみになっている。
「あちゃあ…掃除のメイドになんて説明しよう」
リーフは、自分のほうの始末をつけてから、まだぼんやりとしたナンナを見下ろす。ひとまず、例の長いすにナンナを運び、そのからだを拭う。
 絶頂のたびに前後不覚になのは、まだ彼女がそれに慣れてないからなのだろう。
「今みたいなこと続けたら…いつかの時までには、慣れてくれるかな」
ナンナの衣装の前を合わせつつ、そんなことを思う。

 翌朝。
 ナンナは、まだ昨晩のことを少し覚えているのか、目覚めてリーフを見るなり、少し赤らんだ。
「何赤くなってるの」
「…なんでもないです」
追求するのはやめにした。お互い着替えて朝食に向かおうとして
「そろそろ、シーツをあらわせたほうがいいかしら」
とナンナは言う。しかしリーフは
「それは新しいよ。昨晩僕が換えたんだから間違いない」
部屋の戸を開けながら言った。ナンナが目じりを染めたまま追いかけてくる。
「もしかして、昨晩、私何か」
「ちがうよ、僕が換え時だと思っただけさ」

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