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「全てに酔う一夜・第2話:秘めたる治療」

 とある国の第一王女、エルナは隣国の第三王子であるロータスと結ばれた。
 政略とも言えなくはなかったが、結婚以前に出会い、さらにその時お互い好印象を得たのだから、話はトントン拍子に決まった。
 しかし、どこにも邪魔者はいる物で。
 結婚儀式前に日課である遠乗りの散歩にでたエルナ王女を狙い、求婚者の1人であった公爵家のライオット公子が手下を率い、王女を拉致して監禁。
 そして、その場所において手下と共に王女を陵辱したのである。
 しかし、エルナ王女の子を為す場所を、ライオット公子が奪おうとしたその瞬間、急を聞いて駆けつけたロータス王子が突入。
 ロータス王子は自らの王家に伝わる秘剣でもって一瞬の内にライオット公子や手下達を討ち倒し、エルナ王女を救出した。
その時に深い心の傷を負った王女ではあったが、ロータス王子の献身的な看護により今は人前でも笑顔を見せていられるようになった。しかし、その時は自室に閉じこもり、何度も自殺を考えていたといわれる。
 無論、その事件を起こした公爵家は取りつぶしとなったのであるが……。
 やがて、事件も収束し、婚儀は滞りなく行われた。
 エルナは最初、「資格がない」と悲観していたが、ロータス王子は「どんなことがあっても王女は王女です」と説得し、その誠意に癒された王女は王子と添い遂げた。
 しかし……王女の身体には、その公子の呪いともいうべき、埋み火が隠されていた。



 とある日の夜、王城の廊下を白い物体が浮くように進んでいた。
 その白い物体は、とある部屋の入り口に止まると、小さくドアを、三度叩き、そして二度叩く。
 その音にでてきたのは、ロータス王子であった。
 「エルナ様……どうしてここに」
 王族内で回される玉座の間の当直。
 火急の知らせを受け、国王に注進するための風習で別室に休んでいたロータス王子を、当直室に訪ねたのは、誰あろうエルナ王女であった。
 瞳を潤ませたエルナ王女は、すがりつくようにしてしなだれかかると、熱い吐息と共にロータス王子に対して呟く。
 「ロータス様……からだが、熱いの……もう……」
 「……エルナ様、また火が着かれましたのですね……分かりました、その火を鎮めて差し上げます」
 つぶやきに対して返答を返したロータス王子は、当直室に招き入れ、厳重に戸締まりをし、ドアに六芒星の紋章の刻まれたペンダントを下げる。
 それを下げた瞬間、ロータス王子はある任務に専従し、一切の職務は停止するという。
 その任務とは……エルナ王女の呪いを鎮めるという物。
 そして、その呪いとは……ライオット公子が植え付けた、特殊な性癖であった。

 ロータス王子が、エルナ王女にまかれた白い物……すなわち、白いシーツをゆっくりとはぎ取っていく。
 そこに現れたのは……なめし革製のベルトを、各所に巻き付けただけのエルナ王女のあられもない姿であった。
 腕と手首、それに足首と太股に巻かれたベルトは、各所を繋ぐと、身動きが取れないように出来ていた。
 そして、形のよい胸を強調するようにまかれた、胸の上下のベルト。
 それと、何者かの所有物という証である、首に巻かれた、赤い革のベルト。
 王女が身につけていたのは、それだけであった。
 そう、ライオット公子はこの姿で監禁し、陵辱したのである。
 その時の記憶、身体に刻み込まれた感情が忘れられないエルナ王女は、身体が疼いて来たときに、ロータス王子に同じ事をして貰うようになった……。
 「……エルナ様……その、不遜かも知れませんが……お、お綺麗です……」
 「ロータス様……こんな姿、ロータス様しか……嫌いにならないでください」
 「そんな……どんなことがあっても、僕はエルナ様の側を離れません……」
 そう言って、ロータス王子はベッドの上にエルナ王女を座らせる。
 ベッドには、防水の魔法が掛かっているシートをあらかじめ掛けておく。
 そして、ロータス王子も服を脱ぐと、今度はエルナの手のベルトを後ろ手に固定し、足のベルトを、丁度アルファベットのMの字になるように固定する。
 ベルトしか纏っていないエルナ王女は、これで形のいい胸も、ロータス以外には決して見せようとしない茂みの下の秘やかな部分も、誰かが来れば隠すことさえ出来ない状態にされてしまったのである。
 不覚にも、その姿を淫らなりにも美しいと思ってしまう、ロータス王子だった。
 反応し、もたげてくるロータス王子の分身が目に入ったエルナ王女は思わず顔を赤らめる。
 自身の深奥も潤みを感じてしまったからなおさらであった。
 「恥ずかしい……じっと、見ないで……」
 エルナ王女の懇願をあえて無視し、潤み始めたエルナ王女の花弁をじっと見るロータス王子。
 何があっても懇願は無視するルール。
 しかし、そんなルールが無くとも釘付けになってしまうほど、淫らで綺麗であった。
 「何言ってるんです……お綺麗です……」
 おもむろに否定すると、ロータス王子はエルナ王女の胸の突起に口を付ける
 はむ……くちゅ……
 「くふうっ……ふぅ……」
 すでにぷっくりと、痛いぐらい膨らんでいた胸の突起を口に含む。
 僕は、奴らとは違う、との思いを込めながら。
 事実、ライオット公子はエルナ王女の全身に傷を負わしていたが、ロータス王子は、傷を負わないように細心の注意を払っていた。
 縛る縄をベルトに替えて、跡がつかない、付いてもすぐ消えるようにしてばれにくいようにし、また、汚れて跡が残らないように、嬌声でばれないようにシートや結界護符、そして様々な工夫でエルナ王女の身を庇う。
 繊細な心遣いで、炎を鎮めてくれるロータス王子は、最早エルナ王女になくてはならない存在であった。

 ピチャ……ピチャ……
 「ふうっ、くうっ、あはあっ……」
 胸をひとしきり嬲ったころには、エルナ王女の顔は真紅に染まり、声を悩ましげに上げる。
 それもその筈、身体を固定させて身じろぎしかできないエルナ王女の身体は、快感を全て受けるように出来ていた。
 そしてロータス王子は、ポケットから小さいケースを取り出すと、蓋を開け、透明のどろっとした軟膏を取り出し……エルナ王女の密やかな部分に塗りだす。
 「あう、あは、いやあぁっ!!」
 「良い声ですね……もっと、上げてください……」
 「で、でもぉ……」
 「ここには……僕だけです……エルナ様……」
 「そ、そんな……」
 二人だけの、二人の絆を高める会話。
 呪いであっても受け入れ、その姿を愛おしく扱うロータス王子。
 形ばかりの否定の言葉をあげつつ、エルナ王女はその炎に身を任せる。
 くちゅ……くちゅ……くちゅ……
 「ふああっ! あうう……あう……」
 ロータス王子は、エルナ王女の花弁の奥底に、先端の紅玉に、さらに奥のくすんだ窄まりに満遍なく軟膏を刷り込み、そして胸を舌で舐り、弄ぶ。
 そして、軟膏を刷り込まれたエルナ王女の大事な部分が熱を持ち始める。
 「くっ……くああっ……ふあああっ!!!」
 紅玉が。
 深奥が。
 そして奥底の窄まりが。
 それぞれ別に、独立して快感を送り込む。
 「はぁ……はぁ……はぁ……熱い……熱いの……」
 「エルナ様……」
 「ロータス様……お願い……助けて……」
 ロータス王子が使った軟膏は、以前ライオット公子が使っていた媚薬から、習慣性のある麻薬成分を抜き、その成分を体外に排出させる成分を代わりに入れたもの。
 何度も塗りこまなければ効果を発しないため、エルナ王女は何度もこの麻薬成分に身を焼かれ、その度にロータス王子はこの軟膏を塗り、鎮めていったのであるが、媚薬は媚薬だけにしばらくはエルナ王女も快楽を求め、塗ったロータス王子も無事ではいられなかった。
 「エルナ様……最早……僕も……」
 「はい……来て……ください……私を……ロータス様の思うがままに……」
 そして二人は、二匹の獣となる。
 つながれた雌を喰らい尽くす雄として。
 食らわれる行為に快感を覚え、さらに身を投げ出す雌として。
 本能の赴くままに、求め合う。

 くちゅ……にちゃ……くちゅくちゅ……。
 「ふあっ! あっ! あっ! ああっ! やあっ!」
 ロータスの激しい、紅玉や花弁への愛撫。
 快感と共に訪れる、もう一つの感覚が、エルナを責めさいなむ。
 それを見られることの恥ずかしさと恐怖が、さらにエルナの快感を際だたせる。
 「あっ!! やっ!! やああっ!!」
 「……もっともっと、乱れて貰いましょうか……」
 腰が震え、快感に波打たせるエルナを、さらに愛撫するロータス。
 両手を使い、紅玉をつまみ上げ、身体の奥深くまで蹂躙する。
 しかし、その動きは繊細で、傷つけないように、快楽だけを与えるように蠢く。
 くちゅくちゅ……きゅ……きゅ……
 「くはっ!! あふっ ああああっ!!」
 エルナは体ががたがたと震えだし、足を閉じようとするが、ベルトに阻まれて身動きが取れない。
 その瞬間、紅玉のすぐ下の窪みが、膨れ上がったかと思うと……。
 「や、や、や、やぁぁっ!!」
 ぴゅ……ぴゅる……ぷしゃぁぁぁぁぁぁぁ……
 エルナの悲鳴と同時に黄金色の液体が弾け、あふれ出す。
 弧を描いてそれは飛び、防水の魔法の掛かったシートを濡らしていく。
 最早こうなると止めようもなく、流れるに任せる。
 エルナは最早目も開けられないぐらいに、真紅に顔を染める。
 「お、お願い……見ないで、ください……」
 哀願するエルナ、しかし、ロータスは意外な方法で否定する。
 「綺麗にしないとね……」
 黄金色の液体の流れ終わった窪みに対して口を付ける。
 「や……き、汚いです……」
 「エルナ様の……ですから……汚くなんか、ない……」
 ぴちゃ……ぺろ……ぴちゃ……

 「ふうっ……はあっ……ああっ……」
 飛び散った飛沫や、窪みを丁寧に丁寧に舐め、清める。
 これまでエルナが受けた仕打ちを、なおも清めるように。
 何度も何度も、舌を走らせ、それはやがてくぼみの上にある鮮やかな紅玉や、奥の奥にあるくすんだ赤の窄まりにも、容赦なくうごめく。
 清めたいのもまた事実。
 そして……喘ぎ、悶えるエルナの別の面を見たい欲望に駆られるのも、また事実であった。
 それが薬の力で増幅されたものか、心の中のロータスの別の面であるかは定かではないが……。
 「ロ、ロータス様……ふぅっ……も、もう……あはあっ!!」
 拘束され逃れることもできず、しかし、愛しき人からの愛撫からは逃れたいとも思わずエルナの肉体は確実に、再び快感の鎖にがんじがらめとなる。
 それはロータスも同じように、一緒に絡め取られるようにその身を熱くさせていく。

 「……行きます……」
 ベルトを持ってエルナの身を起こさせて、しどどに濡れた秘裂にロータスの熱塊をあてがう……が、先端はさらに奥の窄まりに当てられる。
 「ひうっ……」
 一瞬の硬直。
 しかし、ロータスと視線のあったエルナに、笑みがこぼれる。
 「……ください……」
 甘えたような懇願。
 精一杯の媚、そして、これまでの行為に対する精一杯の礼。
 その思いを無にしないように、一気に窄まりの方を貫く。
 ぐぐ……ぐちゅ……ずぶ……
 「ひあ、ひあああっ、ひああああああっ!!!」
 息を全部吐き出すような叫び。
 しかし、歓喜に打ち震える叫び。
 ロータスの熱さが心地よさを伴って痛みを消し、快感を送り込む。
 ライオットが何度も繰り返しその窄まりを責めさいなむのに比べると、痛みは何分の一であり、快感はその幾層倍であった。
 「ひあぁ……ひゃぁ……ふああっ……」
 「うご……くよ……くううっ……」
 ぐちゅ……ずぶ……ぐちゅ……
 湿った音を上げて、熱塊がエルナの中を掻き回し、そして奥を責める。
 しかし、その動きはあくまでも優しく、労りつつ。
 その中から2人は快楽を得ようと、うねり、震え、そして踊り出す。
 手を取った2人の視線が合い、そして唇が重なり、腰も小刻みに震える。
 「んぐ! ふうっ……ふあっ……」
 「はううっ……ふああっ……ロータス……さまぁ……」
 想いが伝わるだけに、安心し、そして感じ、身を任せる。
 それが声に、仕草にでて、自然にエルナを艶っぽくさせる。
 その全てに、ロータスも脳髄を灼かれるほどの快感を味わう。
 そして、思いが寄り合わさった瞬間、2人の全身が震える。
 「う、うわ、うああああっ!!」
 「ひ、ひあああっ、も、もう……やああああああっ!!」
 ドピュ……ドクドクッ……
 エルナの深奥にロータスの精が放たれ、そして、折り重なるようにしてベッドに身体が沈み込む。
 そして、荒い息の中、ロータスは体を起こし、エルナの身体のベルトを全部はずして、そして優しく抱きしめる。

 しばしの時、そうする2人であったが、やがてエルナが声を出す。
 「……ありがとうございます。ロータス様……」
 「……大丈夫ですか?」
 「はい……こんなはしたない私なのに……ロータス様……」
 かげりを見せるエルナの額に、ロータスは優しく口づける。
 「……エルナ様だから、好きなんです、それじゃ……だめですか?」
 「ロータス様……」
 きゅう、と抱き締めるエルナに、顔を赤くしたロータスがささやきかける。
 「その……今度は僕が……塗った薬に……もう一度、今度は普通に……いいですか?」
 「……もう……ロータス様ったら……」
 赤くなって微笑み、そしてエルナは、返事の替わりに、ロータスの唇に自分からそっと口づけた。

     FIN   


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