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姫君の夜の秘密
この文章は、異次元とも言われる場所のやんごとない姫君がものしたのいう体験手記の 一部である。この姫君は政争を逃れ異国に逃れ、その国の騎士と恋に落ちたのだ。愛す る騎士との逢瀬に震えんばかりに喜ぶ姫君の赤裸々な艶姿を、とくと御覧に入れられたし。 夜という時間を、私は心待ちにしていた。 昼の間は、騎士として毅然とかしずく彼は、夜になれば私のかけがえのない恋人。あの唇が、指が、今夜は私をどう扱ってくれるのか、それを想像するだけで、私の体はえもいわれぬ熱さに潤み、ふるえてしまうのだ。 柱という柱に掲げられた灯りは、色がわかるほど明るく部屋を照らした。最後のランタンを寝台の帳の中につるして、彼は、私の足から靴を取る。ふくらはぎに触れる手の感覚だけでも、私の身体は電撃が走るように震えた。私の身体を痛めないように、慇懃に触れてゆく彼の指は、絶妙の力加減で私の呼吸を煽る。いつの間にか、私は、ガーターベルトに押さえられた絹靴下と絹手袋だけの姿で転がっていた。足元で、私の服と彼の服のもまれ投げ出されたような音がした。 「今日も…きもちよくして、くれる?」 と訪ねると、彼は何も言わず、私の唇を強く吸った。体を密着させる。脚に、彼の熱い塊が押し付けられているのが感じられて、私は体の中心まで愛撫されるような錯覚を受けていた。 孔雀の羽で嬲られるような愛撫が加えられて、私は両の足をすりあわせた。誰に教えられたわけでなく、背筋が反る。続いて脇腹と、首筋、唇から頬、額際まで、熱い唇の雨が降り、私は前歯で絹手袋を引き抜いて、起き上がり、彼の胸板に口づけた。彼は少し驚いて、畏まったが、 「いいの。…させて」 といえば、静かに、私の肩に手を添えてきた。 私の前の彼はほとんど無言に近い。私が何を言い出しても、時に大いなるため息をつく程度だ。でも、彼のなれた獣が牙を向いていゆく様は、私には何よりも雄弁に自らを語るように思えた。 私は、彼の胸に唇の跡を付けながら、それに触れた。先端の、少しふくらんだ部分を手のひらで押し包むようになでると、彼の身体は小刻みに震えた。私の方を一瞬ひしぐほどに抱きしめて、例の、大いなるため息をついた。私の手に、ぬるりとした感触がした。呆気無くはあったけど…彼はここまで私を求めてくれている。私は、いとおしさの高まるままに、差し上げた手から伝い落ちようとするそれとろりとしたものを唇で拭い、飲み込んだ。暴発したものの勢いを失わない彼に、私は、ごく自然に、身をかがめて唇を近付けていた。 彼はまた抵抗しようとした。だが寝台の頭に彼を半分押さえ付けるようにして、私は彼を含んだ。ほろ苦い味がした。 唇の中で、彼が猛り狂う。弾力のある先端の内側に、堅い芯をかんじる。この堅いものが、私の中を遊ぶと思うと、脚の力が抜けていきそうだ。 その私の体勢が、急に崩される。 「きゃ」 彼は、やや乱暴に私をあおのけにした。 「私はここまでで十分でございます…さあ姫、これからは私に」 彼は、私にそう囁き、秘密の場所に指をのばしてくる。 「んっ」 指が敏感な場所に触れる。そこはもう、彼にこうして慈しまれるのを待っていたように、熱く固くなっていた。恥ずかしい気持ちも少しはあったが、今はそれより、私を慈しむ彼の指に、芯までとけそうで、腰すら動きそうだった。 彼は私から一度身を離し、私の脚の間に身をかがめた。麻痺したように口を開け、とろとろにとろけるそこに指が入ってきたのか、くちゅ、と水音が聞こえた。 「ああ、そこは、そこは」 さらに近付く彼の気配。ふう、と、下の体毛に風の流れを感じた時には、私の敏感な場所を、彼の唇が優しく捕らえていた。 「ふ」 その感覚は電撃の様。私は一瞬身体を硬直させる。 「…貴女のお好みは心得ておりますから」 何気ない様子の彼の一言が余計に私を煽った。断続的に聞こえる水音。私は場末の娼婦にでも成り下がったつもりで、思いつく限りの卑猥な言葉をならべて自分と彼とを高めていった。 「ねえ…私、どうなってる?」 と聞くと、 「このうえなく麗しいお姿です」 と、真面目な声で返答が返ってくる。でも、私の体の芯は、彼の指に捕まえられているままだ。 「うそうそ、そんなはずない。私、私」 家臣の前では、毅然であれと、いつも言い聞かされていた私。でも今は、この彼になら、かしづいてもいいと思っている。顔をあげると、すでに十分固く立ち上がったものが、私の眼に焼き付く。手を差し伸べた。 「…おねがい」 私の足がぐいと広げられて、閉じあわせられないように押さえられ、隠しようのないそこに、一日振りの懐かしい圧迫感は突然訪れた。互いに互いの唇を責めながら、彼はゆっくりと動き始める。ぬちゅ、と粘つく音。 「熱い…」 彼のつぶやきが聞こえた。 「熱い?」 「はい」 「気持ちいい?」 「…はい」 「…わたしも」 彼の重さが、ずんと深くまで刺さってくる。 「あはぁっ」 自分でも予想外の声が出てしまって、おのが口を手でふさいだ。無口であったはずの彼も、 「いかがなさいました」 と場に似合わない丁寧語で聞いた。でもそれに答えるのは時間の無駄と本能的に感じた。 「わからない、でも、…もっと、して」 ぎし、と寝台がきしみ始める。脊髄を通過して、その快感が体の中を走る。ただの「イイ気持ち」でないことはすぐわかった。私の手は空をさまよい、彼の肩をつかんだ。信じられない筋力で自分の背が反る。秘密の部分は発作のように激しい痙攣をする。私は、自分の身体からあふれ出す「イイ気持ち」を弄ぶよりなかった。私を狂わせる元凶のものは、激しく出入りを繰り返す。ぬち、ぐちゅ、と、粘る音も、それにあわせて固くなる。 「痺れるの。止まらないの。震えるの。なみだ出るの」 あがる声も舌足らずになってしまう。彼の顔は目をかみしばって、言葉にしない思いのたけを体に刻んでくれる。深く、深くまで。奥の方がじんとしたかと思うと、ぎゅん、と、意思にかかわらず、その部分が激しく痙攣した。 「あぁ」 彼の吐息のような喘ぎ。私は、その懸命な顔を、下から哀願するような目で見つめていた。 「私、変なの? こんなになっちゃうの。…でも、キライにならないで、お願い。あなたのせいなんだもの。」 喘ぐ息の中で、私は本当に哀願していた。 「お願い、来て、来て! 好き。大好き。素敵なの。飛んでしまいそう! お願い、捕まえてて…!」 泰然と、私の中に彼が染みわたり、離れようとする彼の背中を抱きしめて、長いこと、彼の重みに融けるような感覚を楽しんだ。 自然に視線があい、唇が触れた。私の身体は、挿入されたままの彼の勢いが、綿が水を含むように戻ってゆくのを、敏感に感じ取っていた。 |