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騎士の誓いと姫の想い
「フィン、貴方は折角の休みを有意義には使わないの?」 セイレーン城の一角。彼女は大地に敷かれている純白の絨毯と椅子に腰掛け本を読んでいる私を眺めながらをそう言った。 私の名はフィン。レンスター王国の槍騎士だ・・・そして彼女はラケシス。アグストリア王国、ノディオンの姫君であると同時に私の妻でもある。彼女の実兄であるノディオン王エルトシャン様の仇敵、アグストリア王シャガールをシグルド様が討ち取り、私達はその後、結ばれた。 「いえ、私はキュアン様から急用があるとの事ですので」 「そう・・・貴方と一緒に出かけたかったのだけれど、それでは仕方ないわね」 姫は残念そうに私を見つめている。彼女とは少々古い付き合いになる。やはり、キュアン様がノディオンに行かれる時に同行せよとの事で、それ以来の付き合いだ。チェスに買い物等、色々振り回されてはいたのだが、私はそれほど嫌ではなかった。騎士 の務めという訳ではないが、内心ではどうだったのだろう?今でもそれ程解る訳ではないが、少々は解るようになった様な気がする。 やはり、ノディオンの「おてんば姫」だった彼女に惹かれていたのだろう。気付かぬうちに。 理由はさして重要ではない、現実に彼女がここにいると言う事実さえあれば・・・そう思う。 「じゃあ、行って来るわ。キュアン様の用事が終わったなら来る事、それならいいでしょ?」 「はい」 そういい、ラケシスは出かけて行った。結婚したての頃は、いや、今でも結婚から1年経っていない。彼女に何度もこの言葉遣いはしなくてもいいと言われたが、私なりの騎士としての礼節もあり彼女はそれを認めてくれた。 私は一息つくと、読みかけの本にしおりを挟むと立ち上がり、キュアン様の部屋へと向かう事にした。 私が曲がり角に差し掛かったとき、小さな人影が私にぶつかった。誰かは大体予想がつく。この城の中ではデュー以外有り得ないからだ。 「あ、フィン悪いね」 「いや、別に大丈夫だ。デューこそ大丈夫か?」 デューは急いで起き上がり、服を少し叩きながら「大丈夫、大丈夫」といい、私の方に向き直った。 「フィンは街に行かないのか?」 「いや、キュアン様のお呼びで遅れる事になる」 「早速、ラケシスさんの尻に敷かれてるね」 ・・・正鵠を得ているが故、反論できない。そのままデューは「じゃあ、オイラ達は先に行ってるよ」と言い残し脱兎の如く疾けていく。私も歩調を速めキュアン様の部屋へ向かった。 私はキュアン様の部屋に到着し、ドアを叩く。 「キュアン様、御呼びにつき只今参りました」 「フィンか、入っていいぞ」 その返事を確認し私はドアを開いた。 「失礼致します」 「ああ、そこに掛けてくれ」 キュアン様にそう言われ、私は椅子に腰降ろした。直後、エスリン様とシグルド様が入ってきた。 「キュアン、私に用事とは?」 「シグルド、よく聞いてくれ。私とエスリンは一度レンスターに戻ろうと思う」 キュアン様の言葉に私は疑問を感じた。キュアン様とエスリン様だけがレンスターに戻られるという事に。ならば、私はどうすればよいのだろうか? 「何故だ?」 「近頃トラキアの様子がおかしい。もしかすると私が居ない間を狙ってレンスターを襲撃してくる可能性が高い。それに対する備えが終わり次第、援軍を率いて戻ってくるつもりでいる」 キュアン様の考えは最もだ・・・先のアグストリアとの戦いで竜騎士がいたのを私は覚えている。それに、一騎のみ逃した事を。 ゲイボルグを操る事ができるのはキュアン様とそのお父上、つまりレンスター国王しかいない。それがトラキア王トラバントに伝わったとすれば、レンスターを襲撃する可能性は極めて高いという事は私にも理解する事が出来た。 「だが、フィンにはラケシス姫がいる。フィンを連れてゆくわけには行くまい」 「お言葉ですが、キュアン様」 私は耐え切れなくなり口を開いた。確かに私には彼女がいる。だが、主君と国を守る事こそが騎士としての務めだ。レンスターとトラキアが戦になったとき、私だけがそれに参加できず、ただ報せを待つ事には耐えられなかった。が、それを口にしたとき、後悔が私を責めた。その後悔の正体はわからない。 「私とて、騎士です。キュアン様は我が主君。それにキュアン様から頂いた勇者の槍に立てた誓いがございます。国と主を守る事の出来ぬ者に騎士が務まりましょうか」 「フィン。じゃあ、貴方はラケシス姫をどうするつもりなの?」 エスリン様の言葉に私は絶句した。彼女と婚礼を果たしてからまだ1年も経っていない。彼女と共に過ごした時間というのはあまり無かった。もしかするならば、私と彼女は結ばれるべきではなかったのだろうか? 「・・・フィン、彼女の事も考えてやれ」 キュアン様の言葉が痛い。彼女の事を考えてやるならば、私はここに残るべきだろう。だが、騎士の誓いは不変であるからこそその意味を成す。 勇者の槍に立てた誓い、キュアン様に忠誠を誓い、私の生涯をかけて仕えるという誓いを。 だが、それを成せぬ事は私に騎士の資格が無い事を意味していた。 「騎士の誓いは不変なる物。キュアン、エスリン、フィンの事も解ってやれ」 シグルド様が口を開いた。反逆者とされてもバーハラ王家に忠誠を誓い続けるシグルド様が悲しそうに見えた。ディアドラ様の事だろうか。 「私の銀の剣にはバーハラ王家への誓いが込められている」 「・・・」 「私は騎士としてフィンの気持ちがわかる。確かに此処に残る事はラケシス姫を守る事になる。しかしそれでは目指すべき騎士の姿を失う事になってしまう・・・そうだろう?それでは何の為に君たちに付いて来たか解らないのだから」 キュアン様とエスリン様は何も言わない。 「兄様、でも」 「確かに愛した相手と一緒に居たいと言う気持ちもわかる、だが、それは相手が愛してくれた自分を捨てる事にもなる。私はディアドラが変わっていても愛せると思う。だが、ラケシス姫が果たしてフィンが変わってしまうのを望むかは」 「・・・キュアン様、2日ほど猶予をいただけないでしょうか?」 シグルド様が最後まで言い終える前にキュアン様に向き直り、私は口を開いた。 「どうした?」 「私の一存で決める事は出来ません。私はキュアン様にお仕えする身ですが、彼女の・・・いえ、ラケシスの夫でもあります。彼女がこれをどう思うかは解りません。ですから・・・」 「わかった。2日でいいんだな?」 「はい、それでは失礼します」 私は椅子から立ち上がり、深く敬礼をし部屋から出た。 窓の外には雪が降り始めていた。 私は部屋に戻り、外に出る仕度を整えた。そして、街へと向かう。 姫の立ち寄りそうな所、怪しげな小物屋を見つけ私は中に入っていった。 「いらっしゃい」 店の主らしい老婆が私を迎えてくれた。店はそれなりに広く、美しい装飾品から妖しげな置物まで色々ある。 私は店の中に姫がいないか確認するために周囲を見渡す、やはり案の定、いた。 彼女に買い物を頼まれたとき、この店と似た雰囲気のやはり怪しげな店で彼女の意に添うものを探し出した事を話した事がある。多分そのお陰だろう。 「姫」 「あら、フィン。よく此処がわかったわね」 「いえ、いつかの買い物の顛末を御話した時、興味を持たれていたではないですか。それで」 「ここだ、って思った訳ね」 私は頷いた。そして、今まで彼女が見ていた置物を見てみる。人の形をした焼き物だった。何か叫んでいるような形をしている。 「これは・・・?」 「さぁ、灯りを中に入れるのではないのかしら?」 そのまま暫くの間、店の中を見て回る。目を見張るものから怪しすぎる物まで、幅広い。店の中を一通り見て回り、他の店を見て回るために出入口近くにあった獅子の置物を眺めた。多分、庭にでも置くものなのだろう。2つ並んでいる。2つで1組の商品である事は間違いない。 (絆・・・か) 「ラケシス。少し待っていて貰えないか?」 「突然どうしたの?」 私は店主の所に行き、ここの商品についての話を聞いた。 「はいよ、これでいいかい?」 そう言い、店主が店の奥から取り出したのは古びた指輪。2つ在るところを見ると私の頼んだ目的の品と同じ意味を持つらしい。私にとって品はどうでも良かった。その品のもつ意味が絆、またはそれに準ずる物であれば。 「これの持つ意味は?」 「『誓い』だよ。この品にまつわる話を聞くかい?」 「是非聞かせて頂けないかしら」 「ラケシス!?」 唐突に現れたラケシスに私は正直、驚いた。いや、おてんばで名高かった彼女に待っていてくれと言った私が悪いのか。 「気になるじゃない。突然貴方がどうしてこの品に目をつけたのか」 「この指輪の持ち主だった人は騎士でね、ある貴族の娘に恋をしたのさ・・・」 ラケシスの言葉を無視して老婆は語り始めた。私とラケシスはそれを聞くために喋る事をやめた。 「その貴族の娘は美しくてねぇ、他の貴族の息子達からも求婚をされていた。ありがちな話じゃが、この指輪の持ち主は只の騎士でね。その騎士様の家に伝わる家宝だったんじゃよ」 「それで、その騎士はどうしたの?」 「貴族と騎士では釣り合いが取れないと騎士は思い悩んだ、当然さ。あんた達じゃってそう思うじゃろう?じゃが、その貴族の娘の結婚が決まりそうになった、その時に騎士は思い切って求婚したんじゃよ。そのときに渡したのがこの指輪・・・誓いを込めて家宝の片割れを娘に渡したのさ」 「・・・」 私は何も語らない。 「娘は喜んだ。騎士が自分の事を見つめていた事を知っていたからさ・・・だけど、その父親が許さなかった。当然二人は引き離され、娘は他の貴族の所へ嫁がされた」 「可哀想・・・」 「だけどね、その嫁がされた先の貴族は娘が誰かに惚れていることを見抜いたんじゃよ。 それで、娘に問いただしたのさ・・・他に好きな人がいるんじゃないか・・・娘は正直に言ったのさ、その騎士と相思相愛だったってね」 「それでどうなったの?」 「その貴族の息子はその騎士を召抱えたのさ。本当に娘と結婚したいのならそれに見合う騎士になれという条件付でね・・・それからの騎士の戦場での活躍ぶりといったらそれは凄まじいもので、あっという間にその貴族の息子の右腕となれたのさ・・・そして、二人は結婚したんじゃよ・・・これはその時の誓いを込めた婚約指輪・・・って事さ」 「なんで、そんな大切な物を・・・?」 「私が知るわけが無いよ。ただ、その騎士様はね、自分達と同じ様な人達が少しでも少なくなる様にと願っていたのかもしれないねぇ」 (騎士の誓い、か・・・私がレンスターに戻るといったら何と言うだろう?) 私はあの時感じた後悔の正体がわかった。彼女に対する後悔が脳裏に浮かぶ。彼女を悲しませてばかりになってしまう。 「そう・・・そうなの」 「で、お兄さん、買うのかい?」 「ええ」 私は呼ばれ、正気に戻る。ラケシスの目に少し翳りがあった事は私にもわかった。彼女が、何故私がこれを買おうとしたのか、その理由もまた彼女は見抜いたのだろう。 (貴方はラケシス姫をどうするつもりなの?) どうすればいいのだろう・・・彼女と共にいるべきなのか、彼女と別れ騎士としての役目を全うするべきなのか・・・。 「私は貴方に貴方であって欲しい・・・」 「え?」 彼女の方を見ると、寂しそうな顔で私を見つめている。今の言葉が嘘ではないと同時に私と共にいたいと思う心。 「なんでもないわ。じゃあ、行きましょ」 彼女の翳りが気のせいだったかの様に消え、私たちは暫く辺りの店をひやかしていた。 その暫らく後、私たちはセイレーン城のあてがわれた自室に帰ってきた。 「ねぇ、フィン。どうなの?」 「どう、とは?」 気の入らぬ声で私は聞き返した。あれからずっと考えている。 「もういい加減にしてくださらない!?」 彼女の憤った声が私にぶつかる。私は、覚悟を決めた。 「・・・姫様、私がレンスターに帰らねばならないと言ったら、怒りますか?」 「ええ」 「キュアン様に言われました。キュアン様とエスリン様はレンスターに戻り、私は貴女のために此処に残れ、と」 「そう」 私は壁に立てかけておいた勇者の槍を手に取った。 「ですが、私にはこの槍に誓いを立てています。キュアン様を守り、国を守るという誓いを」 ラケシスの顔色が変わる。騎士の誓いが自分の想いを妨げている事に気付いてしまったからだろうか。私は言葉を続けた。 「私がここにいる理由はキュアン様を主と仰ぎ、キュアン様とエスリン様の身を守る事で す。レンスターを出る時は全くそれを疑いもしませんでした。ですが・・・正直に言います。私は姫様と離れたくはありません」 「貴方は立派な騎士になりたいのでしょう?だから、あれほど悩んでいたのね。・・・フィン、私も貴方と離れたくありません」 やはり、この方は私の考えなど御見通しなのだろう。 「けど、私は貴方の夢を妨げたくは無いわ。私は、そんな貴方だから兄様よりも好きになれたのだから・・・だから、騎士としてではなく、私の夫としてそれを私に認めさせて」 夫として彼女を説得する・・・そうキュアン様に申し上げた筈なのに私は騎士として彼女を説得しようとしていた。よく考えてみると、私ほど妻を顧みれない夫もいないのだろうな。だが、私に夢を追うことを望んでくれる妻がいる。私は彼女の望む通り、夫として口を開いた。 「キュアン様がこの軍に加わっていたことで、南のトラキアが攻めてきているのだ。トラバントも無知ではない。ただ闇雲にシャガール軍の傭兵になったのではない。あわよくばキュアン様を亡き者にしようとして、加わっていた。レンスターも疲弊している。しかし、この軍とは違って、色々なところから援軍があるわけではない。だからこそ、レンスターの者達一人一人の協力が大切なのだ。この戦いが終わればまた逢える。それを信じてはくれないか?」 「信じたい。だけど・・・それでは、納得できない」 「何故?」 ラケシスはクスリと笑い、再び口を開いた。 「どんなに言葉を取り繕っても、貴方は騎士なんだって事・・・夫として私を納得させて、と言ったでしょう?」 言われたとおり考えても見ると、今の言葉も騎士としての私の言葉だ・・・夫としてという事はこれほど難しいのだろうか? 「飾る必要は無いの。苦手でしょう?」 「そうだな・・・」 私は頭の中を切り替えた。難しく考えたところで彼女を納得させる事は出来ない。騎士を目指している私の地が出てしまうだろう。 「ラケシス・・・私は騎士である事を誇りに思っている。君を守る事のできる只一人の騎士であると。だが、私はまだ未熟なのだ・・・君を守れる騎士として更に高みを目指したいと思っている」 「だから?」 「だからこそ、祖国と君を天秤に掛けるような事はしたくないが、君には待っていて欲しい。 私を信じていて欲しい。必ず、君を迎えに来てみせるから」 ラケシスは何も言わない。私は更に続ける。 「君を迎える事のできる場所を作りたい。だから、今だけは、耐えて欲しい」 彼女と私の視線が絡まる。だが、互いに相手の瞳から視線を逸らそうとはしない。 「そう、それでいいの。貴方がそう言ってくれなければ私は絶対に納得できなかったから・・・」 「ラケシス・・・」 「何時此処を発つの?」 「明後日になる」 「明日ではなくて?」 「ああ、キュアン様に2日間の時間を頂いてきた」 ラケシスは少し考え込むと突拍子の無い事を言った。 「明日、キュアン様達と行った方がいいのではなくて?」 「いいのですか?」 「ええ。一緒にいると尚更別れたくなくなってしまうから・・・だけど、今夜は甘えさせて。いいでしょ?」 また少し地が出てしまい、敬語になっていた私を少々睨み付けた後、彼女は私の背中に 腕を回し抱きつき、そう言った。私は夫として、只一人の彼女を守れる騎士としてそれに応じた。 「んっ・・・」 優しい口付け・・・何度もそれを繰り返す。互いを確かめ合うように、互いを忘れないように。 「ね・・・?ベッドまで連れてって・・・」 ラケシスが甘えた声で私にそう言った。私は頷きもせず無言のまま彼女を抱きかかえ、ベッドまで運び、押し倒す。 「貴方。私を愛してくれる?」 「何でそんな事を聞く?」 「女は言葉が欲しいものよ?」 「壊れるまで愛しつづけるよ。ラケシス」 「それじゃダメ。・・・壊れても、愛して」 彼女の言葉に私は苦笑した。なるほど、確かに駄目だ。 「なら、言い直そう。・・・壊れるほど愛してやる」 売り言葉に買い言葉。少々荒い言い方だが、こういう時のラケシスはこうでも言わないと納得しないだろうし、それ以上に私自身もそうしたい・・・いや、その通りにするだろう。 「ねぇ、キスして・・・」 「ああ」 激しく貪るようなキス。お互いに身体を求め合い、同時に心も求め合う。舌を彼女の口内に押し込み、互いの舌を絡ませる。 「んぅっ・・・んっ」 くちゅくちゅといやらしい音が聞こえる。何度もキスを繰り返し、私は乱暴に次々とラケシスの服を脱がせていく。そして、最後に残った下着に手をかけ、何と言うかその・・・引き裂いた。 「やんっ♪」 何故かラケシスは嬉しそうな声を上げる。私は彼女の手が自由にならないように後ろから 強く抱きかかえると、片方の手で彼女の恥部を弄り愛撫するのと同時に、空いている片手と舌で胸と耳の裏を責める。 「ひゃっ!」 ラケシスがビクッとなるが、私は拘束を解く気はなかった。当然、愛撫する事を止めることは無い。それに、やめる必要も無い。 「気持ちいいよぉ・・・もっと・・・あんっ!」 私は彼女の恥部の突起を少々強めに刺激し始めた。彼女が最も敏感なところはわかっている。この類の行為は既に数度こなしているからだ。無論、初めての時は少々抵抗があったが、どのような行為であれ互いに拒んだ事は一度たりと無い。 「そこ、もっとぉ・・・」 ラケシスは自分の手が動かない分、腰を動かして刺激を高めようとする。私は彼女の首筋や肩を舐めていく。彼女の身体が少し痙攣し、快楽に打ち震えている。 「ねぇ、頂戴・・・」 彼女が懇願するように甘い声で囁く・・・が。 「まだ、私は満足していない」 と少々意地の悪い事を言い、腕の拘束を解いた。彼女は私の方を向き直り、私の服を脱がしていく。そして、全て脱がし終わると、私に柔らかく抱きつき再びキスをする。唇を離すと、彼女の舌は私の胸板から下腹部へと舌を這わせるように動かしていく。 「ん・・・」 彼女は目的のものを見つけると、口に含み丹念にしゃぶり始める。そして、緩急をつけながら私に刺激を送っている。私が彼女の頭を撫でると、彼女は上目遣いに私を見つめるが、決してその動きを止めない。 「ん・・・んんっ・・・」 ラケシスは寝転び、片手を私に添えたまま、もう片方の手で自分の股間を弄り始めた。1年前と比べると私と彼女も随分と変わったものだと思う。男子、三日あわざれば刮目すべしとは言うが、それは何も男だけの事ではない。こういう変り方とてあるのだから。 「これ以上は・・・」 限界が近づき私はラケシスにそう言うが、彼女といえばまるで気にせずしゃぶり続けている。先程の様に少々意地の悪い事をしたときは大概報復される。今回はこういう事だ。 「・・・出すぞ・・・」 そして、溜まった欲望は彼女の口内に多量の白濁を注ぎ込む。彼女はそれを恍惚の表情で飲み干してゆく。唇の端にまだ少し残っているので、指で拭き取り、彼女の前に出すと、愛しそうに彼女はそれを舐めとった。 「ね、まだ大丈夫でしょう?」 ラケシスは私の返答を待たずに、私を押し倒し、胸で私のモノをはさみ、再び舌で刺激を与え始めた。無論、彼女の言う通りではあるのだが。 「ん・・・んっ・・・」 彼女としては幸い再び、私のモノが復活するまでそれほど時間はかからなかった。私は彼女の体を起こしてやり、先程と同じ様に抱きかかえると自分のモノを彼女の恥部にあてがった。 「行くぞ・・・」 心臓の鼓動が高鳴っていく。私も、彼女も。幾度も無く交わってきたが、この時の感覚だけは常に変わらない。変わらずにずっと心が激しい鼓動を刻んでいる。 「ん・・・入ってくる・・・」 彼女のそこはやはり既に蜜で溢れ、私のモノを難なく咥え込んだ。肉と肉が擦れる事によって、得も知れない快楽を根幹から受け止める。 「・・・ね、動いて」 私は頷くと彼女の言葉通り彼女の奥まで打ち付け始める。中は既にトロトロになっていて動くたびに結合部から水滴が飛び散ったり、私を伝いシーツに染みを作っていく。 「あんっ・・んぅっ・・・いいよぉ・・・」 「ハァッ、ハァッ」 ラケシスの腰の動きが激しくなる。それに合わせるように私も腰の動きを早めていく。私の息遣いと彼女の喘ぎ声の間隔は少しずつ短くなっていく。 「はんっ・・あっ・・・ふぁっ・・!」 私は更に彼女の胸と恥部の突起を指で弄び始める。刺激するたびに結合部の締め付けが強くなり、私に発射を促す。 「私っ、もう・・・!」 ラケシスがイッてしまいそうになる時、私もそれと同じ様にまた、限界を迎えつつあった。彼女の肉壁が収縮し、私を締め上げるような感覚に見舞う。そして私も限界を迎えた。 「フィン!一緒にっ!」 「ああ・・・!」 彼女の身体がビクッと震え、脱力する。私はその時彼女の奥に自らのモノを押し込んだ。 その時、私の中で欲望が弾けると同時に彼女の中に白濁の奔流が流れ込んでいく。 「ん・・・フィンので・・・一杯になっちゃった」 結合部から引き抜くと白濁が溢れ流れ落ちてくる。その様は物凄く淫らで妖しい。 私は彼女の髪を掻き揚げると再びキスを交わす。そして、再び何度も愛し合った。 「・・・やっぱり、お前も若かったんだな」 「・・・は?」 次の日、共にレンスターへ帰ると伝えるためにキュアン様の部屋へ出向いた私はキュアン様の言動に私は内心首を傾げた。若かった?確かに私は若輩者だが、一体突然なんだというのだろうか?エスリン様はエスリン様で口に手を添え笑いを堪えているといった様子で、私には何が起きているのか全く理解できていない。 「あの、キュアン様?」 「解っているさ。では、帰るとするか・・・レンスターへ」 「・・・ぷっ・・・もう駄目!耐えられない!」 「こら!エスリン!」 エスリン様は突然大笑いし始めた。キュアン様も笑いを堪えていたんだろうか?連られて、笑い始めた。 「キュアン様・・・一体?」 「クククク・・・いや、昨日の夜ちょっと、な」 この笑いの意味がわかったのは私がレンスターに戻った後のことだった。 あまり触れたくない過去として私はこれを語らない事にする。今更何を言ったとしても言い訳にしかならないだろうから。 結局、指輪は何の意味も成さなかった。ラケシスは「貴方との誓いと絆ならここにあるから」といい、自分のお腹を愛しそうにさすっていた。私と彼女の子供。産まれるとしてもその場に立ち会う事は出来ないだろう。しかし、それでも彼女は私の我侭を許してくれた。心からの礼を彼女に言い、セイレーンを発った私は今、キュアン様とエスリン様と共にレンスターへ帰る途中だ。 全てが終わったなら、私は彼女達を迎えに行こう。何年経ったとしても、必ず。 騎士の誓いと姫の想い〜END |